仙台・宮城の中小企業診断士 / 経営コンサルタント 合同会社ジェイドキャット 代表社員 細野哲平ブログ

東北地方の中小企業経営者が会社を経営していくうえで
役立つであろう内容を中心にお届けしていきます。

運転資金について知っておきたいこと(Vol.4) ~事業に必要となる資金の計算方法~

2017年6月26日
「運転資金について知っておきたいこと」シリーズ
「運転資金について知っておきたいこと(Vol.1) ~基本的な考え方~」
「運転資金について知っておきたいこと(Vol.2) ~業種別の運転資金その1~」
「運転資金について知っておきたいこと(Vol.3) ~業種別の運転資金その2~」
 
 
繰り返しになりますが、運転資金とは、売上と入金のタイミング、仕入れと販売のタイミングが違うために必要となる資金のことです。
 
計算式は以下の通り。
 
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
 
売上債権・・・売掛金、受取手形等
棚卸資産・・・材料、仕掛品、製品、商品の在庫等
仕入債務・・・買掛金、支払手形等
 
 
今回は運転資金の構造を基礎に、固定費も含めた事業に必要となる資金の計算方法について書いてみたいと思います。
 
自分の事業を回すのにいくら必要なのかは、経営者であれば把握しておきたいところですし、銀行融資申し込みの際にも、申し込み金額が必要な理由をスマートに説明できるようになります。
 
会社を運営していくうえでは、これまでご紹介してきた運転資金の他に、毎月必要となる固定費があります。
例えば、人件費(社長の報酬も含む)、事務所の家賃、光熱費、通信費、交通費などの販管費、それから借入をしている場合の金融機関に支払う利息も含まれます。
 
ここで考える必要があるのは、自分の会社では、固定費の何か月分の現預金を用意しておく必要があるのかということです。
これを「必要固定費」とするならば、実質的に事業に必要となる資金は、運転資金+必要固定費ということになります。
 
何か月分の固定費を用意すればよいかということですが、これは入金タイミングと出金タイミングの差の分になります。
計算式としては、
売上債権の回収期間+棚卸資産の回転期間‐仕入債務の支払期間
となります。
 
例えば、以前の例のように、売上債権の回収期間が1ヶ月、商品在庫期間(回転期間)が0.5ヵ月、仕入債務の支払期間が1ヶ月だった場合、
1 + 0.5 – 1で0.5となり、計算上、固定費は0.5ヵ月分必要ということになります。
 
要は、入金タイミングと出金タイミングの差の分だけ、固定費も用意しておく必要があるということです。
 
この入出金タイミングの差は運転資金に比例するので、運転資金が大きくなる業種はこの「必要固定費」も大きくなりますし、逆にこの差がマイナスになる、つまり出金よりも入金が先に来るのであれば、「必要固定費」も小さくなります。
 
また、これはあくまで計算上の数字で、実際は日ごとの入出金タイミングによっては不足が生じる可能性があります。
際どい資金繰りの場合は、資金繰り表を作るなどして、より注意して管理してください。
 
次回は売上急成長で絶好調の時にこそ注意が必要な増加運転資金について書いていきたいと思います。

運転資金について知っておきたいこと(Vol.3) ~業種別の運転資金その2~

2017年6月19日
「運転資金について知っておきたいこと」シリーズ
「運転資金について知っておきたいこと(Vol.1) ~基本的な考え方~」
「運転資金について知っておきたいこと(Vol.2) ~業種別の運転資金その1~」
 
 
繰り返しになりますが、運転資金とは、売上と入金のタイミング、仕入れと販売のタイミングが違うために必要となる資金のことです。
 
計算式は以下の通り。
 
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
 
売上債権・・・売掛金、受取手形等
棚卸資産・・・材料、仕掛品、製品、商品の在庫等
仕入債務・・・買掛金、支払手形等
 
 
今回は前回に引き続き、運転資金について業種・業態別の特徴を例を挙げながら説明していきます。
 
4.卸売業
卸売業の場合は、一般的には相応の運転資金が必要になる場合が多いです。
現金問屋でもない限り、普通は売上も掛取引が中心になるからです。
 
また、取り扱い商品が多い場合、在庫も相応に多くなります。
 
運転資金を小さくするには、なるべく仕入れから販売までのタイムラグを無くすことです。
粗利益率の低い卸売業の場合、仕入債務もそれなりの金額になるはずなので、仕入れた商品を素早く販売することで、棚卸資産を減らせれば、運転資金は抑えられます。
 
そのためには取り扱い商品の選別が必要になりますね。
 
 
5.製造業
製造業は運転資金が必要となる業種の代表例です。
 
まず、完成品だけでなく、材料や仕掛品も在庫になりますし、製造に一定の時間を要するため、棚卸資産は大きくなりがちです。
 
また、製品販売の際も売掛取引が一般的なうえに、支払いサイトも長いことがあります。
運転資金を小さくするためには、なるべく材料や中間部品、製品在庫を持たない、短い期間で製造するといったことで棚卸資産を少なくするための対策が必要になります。
かの有名なトヨタのジャストインタイムなどはまさにその典型ですね。
 
また、売掛サイトが短くなるような流通ルートを選ぶ、直販を行うなどで、売掛金を少なくする対策もあるでしょう。
 
なお、ソフトウェア開発業も運転資金の構造的には製造業に近いです。
余談ですが、私が過去に会社経営に失敗したのは、この運転資金の構造を知らなかったことも一つの要因です。
 
 
以上、身近な業種・業態を例に、いくつか運転資金についての特徴を書いてみました。
あなたの業種・業態ではどのくらい運転資金が必要かわかりましたか?
 
 
ところで、運転資金というと、会社を維持するために必要な資金というイメージで捉えられている方もいらっしゃいます。
 
実際、銀行融資申し込みの際にも「3か月分の運転資金をお願いします」といって、人件費や家賃などの固定費も含めた金額で申し込み、その金額で融資を受けたことがある方もいらっしゃるでしょう。
 
 
次回は、運転資金の構造を基礎に、固定費も含めた事業に必要となる資金の計算方法について書いてみたいと思います。
 
これを知っていると、銀行融資申し込みの際に、申し込み金額が必要な理由をスマートに説明できるようになります。

運転資金について知っておきたいこと(Vol.2) ~業種別の運転資金その1~

2017年6月15日
前回エントリー「運転資金について知っておきたいこと(Vol.1) ~基本的な考え方~」の続きです。
 
前回、運転資金は売上と入金のタイミング、仕入れと販売のタイミングが違うために必要になると書きました。
 
復習として、運転資金の計算式は以下の通りです。
 
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
 
売上債権・・・売掛金、受取手形等
棚卸資産・・・材料、仕掛品、製品、商品の在庫等
仕入債務・・・買掛金、支払手形等
 
 
ところで、こういった商売の取引形態は、業種や業態によって異なります。
そうすると当然、必要となる運転資金も大きく変わってきます。
 
多額な運転資金が必要になる業種・業態と、そうでもない業種・業態があるということです。
今回は身近な業種でいくつか例を出してみましょう。
 
 
1.飲食業
飲食業は運転資金がほとんど無い業種の代表例です。
何故なら、売掛債権、棚卸資産がほとんど無いからです。
 
売上債権はクレジットカード利用の場合くらいで、カード取扱がないお店は売掛金はほぼゼロではないでしょうか。(ツケ払いがあるのなら別ですが)
 
棚卸資産である食材もほとんど当日に使い切ってしまうのではないでしょうか。
ただ、保存がきく食材やお酒などを多く置いている場合は多少あるかもしれません。
 
そして、食材等の仕入れを掛け取引している場合は、仕入債務は発生します。
 
よって、場合によっては、運転資金がマイナスになる場合もあります。
つまり、仕入債務の支払い分、資金に余裕ができるということです。
これを「回転差資金」と呼びます。
 
ちなみに、飲食店の王道の戦略としては、この回転差資金で、どんどん新規出店を行って拡大を図っていきます。
 
 
2.小売業
現金取引が多い小売業であれば、飲食業同様に運転資金はあまり必要ない業種です。
 
ただ、小売業の場合、仕入れから販売までのタイムラグは一般的には飲食業よりは長いので、棚卸資産は大きくなりがちです。
 
仕入れてから販売までが長い商品が多い場合は、その分の運転資金が必要になるのでご注意ください。
 
 
3.店舗型サービス業(理美容、エステ、マッサージ店等)
理美容、エステ、マッサージ店等の店舗型のサービス業も、基本的に運転資金は必要ない業種です。
 
やはり売上は現金取引が多いでしょうし、さらにこういった業種の場合、在庫がほとんどありません。(シャンプーとかはあるのでしょうが)
 
さらに、エステやマッサージ店だと、回数券を販売している場合がありますね。
この回数券の販売が大きいと、将来の売上分も先に入金されることになるので、さらに運転資金は不要になります。
 
これらの業種も回転差資金が生まれるので、これを使って新規出店をしていくのが王道の拡大戦略です。
 
 
4.経営コンサルティング、講師、教室等
同じサービス業でも、我々のような経営コンサルティング業や講師、教室運営の場合だとちょっと異なってきます。
これらの業態の場合、支払条件次第で必要運転資金は全く異なります。
 
支払条件が前払いが多い場合は、運転資金は不要です。資金的にも余裕ができます。
 
逆に後払いが多い場合、つまり例えば「サービス提供完了後の翌月末払い」とかにすると、その分の売上債権が運転資金になります。
 
外注でもしていない限り、支払債務はほとんどないでしょうから、売上債権=運転資金になることが多いかと思います。
 
余談になりますが、行政のお仕事はたまに「年度末一括払い」という条件があります。
仮にすべての仕事をその条件でやってしまうと、運転資金が年商と同じということになってしまいます。(極端な例ですが)
売上になるからと、何も考えずにホイホイ受けていると、いつまでたっても入金が無くて資金難に陥ってしまうということにもなりかねませんのでご注意ください。
 
 
長くなりそうなので、続きは次回にします。