仙台・宮城の中小企業診断士 / 経営コンサルタント 翠星企画株式会社 代表取締役 細野哲平ブログ

東北地方の中小企業経営者が会社を経営していくうえで
役立つであろう内容を中心にお届けしていきます。

個人の借入金を資本金にしてもいいのか?

2018年1月9日
前のエントリーと関連しますが、設立時の資本金を個人の借入金でまかなってもいいのかというお話です。
 
例えば、「自己資金がほとんどなく、ご両親や親戚等から借りた資金で起業したいのだが、その資金は資本金にすることができるのか」といった感じです。
 
ネット等で調べると、「それは見せ金になるから駄目」と書いてあることもありますが、借りた資金で会社設立した後、すぐに資金を返済してしまうのならともかく、長期間借り続けるのであれば資本金として扱って構わないです。
 
ここでいう「見せ金」とは、資本金の払い込みを仮装する意図で行われる行為のことを指します。
たとえば、資本金300万円の会社にしたいから、どこかから資金調達してきて資本金として払い込み、そのあと当該資金を全て(またはほとんど)返済してしまうとなると、資本金としてあるべきお金が実際には無いわけですから問題でしょう。
しかし、個人で借りてきた資金を資本金替わりにして実際に設備投資や運転資金として使うのであれば特に問題はないわけです。
 
以上、結論としては、「見せ金」でない限り、設立時の資本金を個人の借入金でまかなってもOKということになります。 ちなみに増資の場合も同様です。
 

資本金1円の会社が財政的にNGな理由

2017年12月24日
以前のエントリー「会社を設立するときの資本金はいくらにすればよいのか?」にて、資本金1円の会社は作れるけれども止めた方が良いというお話をしました。
 
そこでは、1.信用面、2.財政面、3.税金面の3つの観点から資本金の金額について書きましたが、今回は財政面についてもう少し突っ込んだことを書いてみたいと思います。
 
 
初めに結論を書いてしまうと、1円会社が財政的にNGな理由としては、設立してすぐに債務超過になるからです。
 
会計に疎い方向けに債務超過について簡単に説明しておくと、資産(*1)よりも、負債(*2)の方が上回ることを言います。
 
*1)現預金や売掛金、商品在庫、土地や建物や設備といった会社の資産となるもの
*2)他人から借りてきたお金のこと。将来支払わなければならない買掛金や未払金なども含む
 
 
1円の資本金では会社の営業に必要なものは何も買えません。
 
例えば1円で会社を設立したとして、貸借対照表(B/S)は資産勘定に現預金が1円、負債勘定0円、自己資本勘定1円だとしましょう。
 
そこで100円のボールペンを買ったとすると、会社の現預金は1円なので、社長の個人的資金から不足分の99円を出したとします。
すると会計上は負債勘定に社長借入金として99円が計上されることになります。
 
それにより貸借対照表は資産勘定0円、負債勘定99円、自己資本勘定-99円となります。
ボールペン1本であっという間に債務超過になることがおわかりでしょうか。
 
 
では、なぜ債務超過がダメかというお話です。
当然、金融機関からの評価は厳しくなります。ここでは詳しい話はしませんが、債務超過というだけでお金は借りにくくなると考えてください。
 
また、各種補助金の審査にも不利になる場合があります。
補助金の申請の際、財務諸表の提出が求められる場合がありますが、審査基準に「財務体質の健全性」が入っている場合、債務超過というだけで最低点に近い評価を付けられてしまう恐れがあります。
 
それから、何かの取引を始めようとした際に、相手先から信用調査をされて債務超過が発覚すると、取引見送りという判断をされてしまう恐れがあります。
 
 
このように、債務超過という事実は、会社の財政状態にかなり悪い印象を与えてしまうのです。
 
ですので、できれば最低限、通常に営業している範囲においては債務超過にならない程度の資本金を準備した上で会社設立にのぞみたいところですね。

昔のことを引きずるな!サンクコスト(埋没原価)について

2017年11月27日
これはとある中小企業のお話です。
海外に現地子会社を設立したところ、経営が思ったようにうまくいかず、現地側からの改善提案もあったのでそれに従って何度か追加投資をしたものの、一向に経営が軌道に乗る気配は見えません。
ここまで投資した金額は約3億円。
中小企業にとっては少なくない金額です。
 
日本側としては、正直、もう見込みがないと感じ始めているのですが、現地側からは「もう5,000万円投資してもらえれば必ず軌道に乗せる」と再度の追加投資要請が来ています。
 
日本側は追加で5,000万円投資するか否かについて検討することとなりました。
 
 
もしここで手を引くとすると、これまで投資した3億円は回収の見込みはなくなります。
つまり、3億円の損失が確定するということです。
 
社内からは「これまで3億円も突っ込んできて今更止められるか」という声もあります。
 
 
しかし、この3億円はサンクコスト(埋没原価)といって、たとえ事業を止めたとしても決して戻ってこない費用(原価)です。
本来、意思決定において考慮から外さなければなりません。
 
ですので、あるべき考え方としては、3億円の投資のことは忘れて、5,000万円追加投資した場合に、将来5,000万円以上の回収が見込めるか否かで判断する必要があります。
 
つまり、この時点では5,000万より1円でも多く回収できるのであれば、追加投資するのが合理的な判断となります。
 
初期投資と合わせた3億5,000万円を回収できるか否かで考えるのではないのです。
 
 
こうやって書くと理屈では皆さん納得できると思いますが、これが自分が投資の当事者になるとなかなか正常な判断ができなくなります。
(経験ある方はよくおわかりでしょう)
 
 
例えば以下のようなことに身に覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
・映画館に入ったけど全く面白くない。だけどチケット代払ったから最後まで見る。
 
・ギャンブルで多額の損失を出している。この損失を埋めるまではギャンブルを止められない。
 
・付き合っている恋人とうまくいかない。だけどこれまで付き合ってきた時間や相手のために使ったお金を無駄にしたくない。
 
 
 
人間、なかなか過去の失敗を認めたくはありません。
 
しかし、未来をよくするためには、過去の失敗を認め、昔のことはすっぱり忘れて前へ進む必要がありますね。